モンゴルでレザーブランドHushTugを立ち上げた理由

こんにちは、戸田です!

モンゴルに移住しレザーブランド「HushTug」を立ち上げた理由をまとめました。今までWeb系の仕事しかしてなかったのになんでレザーなの?って聞かれることがあるので、ブランド名に込めた想いや、アパレル業界の問題点、無駄な構造、作り手が搾取されている現状、そして大きな可能性について、つらつらと書いていこうと思います。

きっかけは「服を作りたい!」という奥さんのおねだり

モンゴルの友達に洋服を作っている人がいて、その人が服作りを教えてくれるということで、奥さんが「自分で服を作りたい!」とおねだりしてきました。最初は「行ってくれば〜」くらいの軽いノリでしたが、せっかくなので工房を見たいと思い一緒に行くことに。

マンションの地下にひっそりとあるこじんまりとした工房で、ウランバートルにはこういう小さい工房がいくつもあるらしい。そこでふと、「そういえば自分が着ている服っていくらで作れるんだろう?」と思い、職人さんに聞いたところ、「500円くらいだよ。高くて1,000円かな」とのこと。マジか、これ池袋西武の某ショップで8,000円で買ったんだけど。。。苦笑

 

アパレル業界はムダが多すぎる

職人さんに原価を聞いたことで「なんで、こんなに高いんだろ?」という疑問が湧いてきました。一度気になったら調べないと気がすまない。ということで電子書籍やらネットでいろいろ調べた結果、どうやらアパレル業界の構造自体に問題があることが分かりました。

既存のアパレルメーカーは売り切れになり店頭での機会損失が出るくらいなら、多めに供給したほうがいいと、在庫として売れ残ることを計算して、それを小売価格に織り込んでいます。加えて、『工場→商社→アパレル企業→小売店→消費者』という物流になっているので、中間業者が多く当然その分マージンが乗りますので値段が上がっていきます。

「これ、ECを使って『工場→戸田会社→消費者』にすれば同品質のモノを従来の小売価格の50%くらいの価格で出せるんじゃないか?」と、このあたりからITを駆使すればアパレル業界を変えられるんじゃないかと1人でワクワクし始めました。笑

 

ファストファッションは世界的な社会問題になっている


↑(バングラディッシュの縫製工場が崩壊した写真)

「そういえばアパレル企業の世界トップってどこなんだろ?売上はどれくらい?」ってことで調べてみると、

2016年 売上高

1位:Inditex(ZARA)        2兆8,368億円
2位:H&M            2兆4,802億円
3位:Fast Retailing(ユニクロ)  1兆7,864億円

見事にファストファッション系企業がトップ3を独占していました。「ユニクロすげー!」と個人的には思いましたが、調べていくと、どうやらファストファッション企業の影の部分が世界的な問題になっていることを知りました。

環境問題、人権問題、労働環境問題、搾取の構造、工場崩壊の悲惨な事故などなど、僕たちが普段当たり前に来ている服の裏側で壮絶な環境で働いている人たちがいるのです。詳しく書くと長くなるので、参考URLを貼っておきますので是非読んでみて下さい。

<参考Webページ>

光と影…ファストファッションが抱える問題

<参考文献>

誰がアパレルを殺すのか

ユニクロ帝国の光と影

<参考映画>

ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~(字幕版)

 

特に映画の「ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~」は心に刺さるものがあるので、少しでもファッション業界に興味があるなら見ることをオススメします。

無駄が多い業界の構造、そして大量生産大量消費による様々な問題などを知り、「せっかくモンゴルに住んでいて、服や革製品などを作れる職人が周りに沢山いるなら、自分でブランドを立ち上げて業界を変えていこう」「そして、モンゴルにある良い素材(カシミヤや革など)を世界に発信出来るようなブランドを作ろう!」

と、全く経験のないファッション業界に参入することを決めました。

モンゴルレザーとの出会いと可能性

(モンゴルの大草原にいる動物たち)

HushTugではモンゴルレザーで作ったバッグや小物を主に製造していますが、レザーとの出会いは買い物をしている時に偶然手にしたレザー製品がきっかけでした。

街なかで売られているレザー製品を見ていると値段はとても安いのに、デザインがダサすぎて、正直0円でもいらないレベルでした。苦笑

しかし、モンゴルは動物が多くいる国なので素材自体は安く手に入るし、日本のデザインや技術を導入すれば世界で通用する製品を作れるのではないか?とモンゴルの革の可能性を感じ始めました。

(夫婦で革職人をやっています。左の男性が雑誌サイエンスに掲載された経験がある凄い人)

その後、革職人さんにレザーの品質について調べてもらうと、モンゴルで加工されている革の約40%はイタリア、スペイン、トルコ、韓国などに輸出されていることが分かりました。(この話を聞いた時「イタリアンレザーに使われてるの?モンゴルレザーすげー!!」と興奮しました。笑)

なぜ、ここまで海外から人気があるかというと革が頑丈だからです。モンゴルの家畜は夏は30℃、冬は-40℃という厳しい環境を生き抜きます。そのため皮が世界トップクラスで頑丈に育ち、また他国の皮よりも環境に合わせる対応能力が高いと言われています。また、飼育環境も基本的に放牧で自然の草を食べて育つので100%オーガニックで、ストレスフリーな生活が皮を頑丈にしています。

ここまでの素材を持っているのに、残念ながらモンゴルは経済や産業の発展が遅れているため加工やデザインの技術力がなく、付加価値の低い原皮での輸出が多くなっています。

(色を付けたりする前の皮。加工が少ないため当然価格は安く利益は少ない)

モンゴルの原皮がイタリアなどで製品になり、高級品として世界に売られているわけですが当然モンゴルは儲からないのでレザー産業自体が盛り上がっていません。

モンゴルでバッグなどを作っている業者もありますが、主に中国への輸出が多く、技術力が必要な製品を作るのではなく、いかに大量に安く作れるかに重点が置かれているため品質はイマイチでデザインも正直ダサいです。(革を切って縫い付けただけのような雑な作りが多い。)

結果的に技術が育たず、原皮で売るか、安い商品を大量に売りさばくかになっているのがモンゴルのレザー業界の現状です。この問題を解決するために日本の革職人から技術を学び品質を上げ、素材や部品は出来るだけモンゴルから調達することで高品質適正価格を実現すること追求しています。

僕の実体験で20代前半の頃に高級感のあるかっこいいバッグを買おうと思っても値段が高すぎて気軽に買えずにもどかしい思いをしたことがあります。もっとレザー製品を気軽に買えるように出来ればレザー市場の底上げに繋がると思っています。

「HushTug」という言葉に込めた想い

「HushTug」はハッシュタグと読みますが、本来のスペルは「HashTag」が正しいです。HushTugは造語で、

「Hush」・・・静める
「Tug」・・・強く引っ張る

という意味の英単語を繋げました。続けて読むと「ハッシュタグ」となり、ハッシュタグはSNSでよく使われる「#」で、

「ハッシュタグ」・・・自分たちと同じ価値観を持った人と繋がりたい

という意味です。

「消費者に対して大量生産、大量消費ではなく本当に必要なものだけを選んで買うようにメッセージを伝えたい」「10年先も使えるシンプルで品質の高いものを作りたい」という気持ちから、

「大量生産、大量消費を静め、次の時代のアパレル業界をリードできるブランドへ。そして自分たちと同じ価値観を持った人と繋がれるブランドになろう。」という想いを込めて命名しました。

アパレル業界の大きな可能性

アパレル業界はビジネスとして捉えても大きな可能性を秘めています。国内だけで見ればマーケットは横ばいで大きくなっていませんが、海外だと2025年までに市場規模が2倍になると言われていて、発展途上国を中心に大きな成長が期待できる市場なのです。更に越境ECが盛んになってきて、アパレルECはまだまだ伸びると思っています。

更に僕がモンゴルに住んでいるので、モンゴル人経由で中国、インド、ロシアなどの国にも人脈が作りやすく、弊社ならではの強みになると確信しています。

 

あとがき-ブランドを通じて実現したい未来-

僕は大学を卒業後、地元の鳥取銀行に就職しました。しかし実際に働いてみて自分のやっていることに疑問を感じ、苦労して入行したのにたった1年で辞めてしまいました。

その後、ビジネスを立ち上げるため上京し自分の人生を模索している時に様々な人と出会う中で僕の人生は少しずつ自分が望んでいる方向に変わっていきました。この実体験から「人は人との出会いで変わることが出来る」と確信したのです。

そして「自分が人との出会いで人生が変わったから、そういうきっかけを創れる人間になりたい」と思い起業しました。

一見すると20代のノウハウも知識も経験も人脈もない若者が言語の通じないモンゴルで事業を作るなんて無謀なことに思えるかもしれません。

しかし困難だからこそ誰もやらない、そこに挑戦する意味があります。ブランド事業を通じて僕なりの価値観や挑戦する姿勢を発信し「あいつでも出来るならオレでも出来るんじゃないか?」「私も何かやってみよう!」と何かを始める人が1人でも増えれば嬉しいです。

社会や誰かの問題を解決できる人間が増えれば世界はもっと豊かに、もっと幸せになると信じているからです。同時にモンゴル人が自国のレザーに可能性を感じればモンゴル国の産業が盛り上がり、 国が変わる可能性だってあります。

1つの小さなブランドに過ぎないHushTugがもしかすると国すらも変えるきっかけになれるかもしれない。こんなにおもしろい挑戦は他にありません。

だから、僕はHushTugを通じて自分の挑戦を発信し続け一人でも多く人のきっかけを創っていきます。モンゴルとユーザーと共に成長するブランドそれが「HushTug」です。

これから応援よろしくお願いします。

HushTug 代表
戸田貴久

 

2 Comments

高木由紀子

お疲れ様です。お世話になっております。モンゴルに移住される前に

Luzのセミナーで数回お世話になった高木由紀子と申します。

Luz-holdingsからアパレル立ち上げのお知らせでブログを読ませていただきま

した。非常に興味深いお話です。

本来はものづくり、デザイン方面の方に興味があり、特に今回書かれている価

格設定の部分は大きな問題だと思っていました。

#HushTugの製品も実際に手にとって試して見たいと思います。

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toda

お世話になります。戸田です。
是非、デザイン面でお力を貸してください。

流行ばかりを追い来年には着ないようなデザインではなく、飽きがこず長く使えるシンプルで洗練されたデザインを求めています。

よろしくお願い致します。

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